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広報・研究成果

産総研ニュース
発 行 日  1999 Vol.4 No.5
カ テ ゴ リ  V 事業紹介
タ イ ト ル  金属材料表面改質技術研究開発

1 はじめに

 放電加工法とは,加工油や水などの液体中でマイクロ秒オーダーのパルス放電を発生させ,鋼や超硬合金などの導電性材料を成形する加工法です。10年ほど前に,仕上げ加工時に導電性粉末を加工油に添加すると,従来より平滑な仕上げ面が得られ,また耐食性などの加工面特性が向上することが見いだされました。それ以来,この液中のパルス放電を,加工ばかりではなく,表面改質に適用しようという動きが活発に見られるようになっています。

 この表面改質法を放電加工と関連の深い金型へ適用した場合次のようなメリットが考えられます。仕上げ加工時に,加工油中に導電性粉末を添加するなどの方法により表面改質を行えば,従来は別工程で行っていた表面改質を,既存の装置を用い行うことができます。すなわち,コストを大きく上げることなく金型の高度化が図れるのです。

 このような背景から,当所では,平成10年度から2年間の計画で「金属材料表面改質技術研究開発」事業と題し,パルス放電を用いた表面改質の研究開発に取り組んでおります。以下に,この事業の平成10年度のテーマである「液中放電を用いた高耐摩耗性膜の形成」について紹介します。

2 研究内容

 放電加工に用いられる液中パルス放電を用いた表面改質法としては,図1に示すように,圧粉体電極を用いる方法および放電加工油に導電性粉末を添加する方法の二つが挙げられます。前者はTiC(炭化チタン)等の硬質材料が放電時の衝撃力により被改質材へ移りやすくするため圧粉体電極として用いています。電極と同一の硬質な改質層を形成することが可能ですが,電極が圧粉体であるため脆く成形が困難なため,適用できる形状が単純なものに限られると思われます。後者は,電極に銅やグラファイトを用いますので成形が容易で複雑形状に適用できます。しかし,当初は加工面の平滑化が主目的であったため,母材と比べ改質層の硬さはあまり上昇していませんでした。

図1 液中パルス放電改質法
図1 液中パルス放電改質法

 本研究は,液中パルス放電改質法を金型に適用し,金型に硬質層を形成し長寿命化を図ることを目的とします。金型は一般に形状が複雑であるため,圧粉体電極を用いる手法を適用することは難しいと思われます。そこで,放電加工油に粉末を添加する手法を採用します。この方法は,先に述べたように,改質層の硬さは母材に比べあまり上昇しませんので,硬さを増大させることが課題となります。

 放電加工油中で放電を発生させると,放電の熱により,油が分解し炭素が生成し炭化雰囲気が形成されます。したがって,改質層には炭化物が形成されやすいと思われます。そこで,ここではWC(炭化タングステン)やTiCなど硬質な炭化物粉末を用います。

 当所ではWC粉末を用い,母材には冷間工具鋼SKD11に比べ放電加工時の鏡面性が向上するDC53を用いて研究を行っております。現在,硬さは母材の2倍以上,摩耗量は母材に比べ30%以下の改質層が得られております。改質層断面の一例を図2に示します。

図2 改質層断面の光学顕微鏡写真
図2 改質層断面の光学顕微鏡写真

3 おわりに

 ここで紹介しましたパルス放電を用いた表面改質技術は,金型ばかりでなく,耐摩耗性が求められる一般の機械部品などに適用することが可能です。特に,微細で複雑な形状のものに対し適していると思われます。この表面改質技術に関心をお持ちの方は,材料工学部材料形成チームまでご一報ください。

執 筆 者  材料工学部 薩田寿隆,平井清人,吉澤宗晴,大石健司
備    考
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